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(2018年に掲載された記事の復刻版です)
生命環境学部では、理系の学部としては比較的珍しく、男女比がほぼ均等です。そのせいかキャンパスの雰囲気は割合華やかで、和気あいあいとしています。そのなかで、生命環境学部の女子学生は勉学や研究にも力を発揮しています。学業成績で表彰を受けるのも、近年は女性の方が多いようです。今回はその中で、今年生命環境学部で博士号を取得して研究者としての一歩を踏み出した山下研究室の岡本麻子さんにインタビューしました。 岡本博士は博士課程在学中より日本学術振興会の特別研究員に採用され、現在は博士取得後のカテゴリーであるPDに進んでいます。日本学術振興会の特別研究員は、研究者の登竜門と言ってもよい、大変名誉な身分です。
インタビューに答える岡本さん
Q:岡本さんが県立広島大学に入学した理由を教えてください
(岡本)いわゆる、滑り止めです(笑)。第一志望の大学に前期試験は不合格だったため、後期試験で教員免許状が取得可能、かつ大学院進学が可能な大学を念頭において本大学を選びました。
Q:県大に入学して、自分が考えた通りの大学だと感じましたか、それとも違いましたか?
(岡本)それまで、大学といえば総合大学をイメージしていたため、一キャンパスに一学部しかない県立大学は想像とは違いました。自分の希望する学問分野の講義を効率的に取ることができる一方、専門分野以外の、例えば文化系の講義は、遠隔システムなどで提供はされるものの、少し選択の幅が小さかったように感じたことを覚えています。その代わり、学びたいことは自分で学ぼうという気概が培われたように思います。また、図書館設備は想像以上に充実しており、そこで知識を補うことができました。
Q:卒論の研究室はどのようにして決めたのですか?
(岡本)実際に動物の個体を用いて研究したいという希望を持っていたので、まずそこから絞り込みました。県大では研究室訪問の期間が設けられ、自分が納得するまで何度でも研究室を訪問し、指導教員の方とお話しすることができます。その中で、自分の興味に合致したのが今の研究室でした。また、自分は研究を追求していきたいという希望を持っていたので、事前にウェブサイトなどから情報を集め、論文等をアクティブに発表している研究室を選びました。
Q:大学院に行こうと思ったのはなぜですか?また、博士課程への進学を決めたのはどのような理由でしょうか?
(岡本)大学入学前から、企業に就職する場合でも、理系であれば大学院に進学するものだろうと思っていました。庄原キャンパスでは2年間(大学3年次から4年次まで)の卒論研究期間が与えられるとはいえ、それだけではやはり他大学出身者に差をつけられない。実際に、生命環境学部では、研究職を目指す人は理系の大学教育を6年と捉え、博士前期課程(修士課程)に進む人はかなり多いという印象があります。 実は博士前期課程(修士課程)を終えるタイミング(大学院進学後2年目)で実際に就職活動もしてみたのですが、自分の興味を仕事にするには、やはり研究者になるしかないと感じ、更に3年間の博士後期課程への進学を決意しました。
実験中。集中力が勝負。
Q:研究の面白さはどんなところにあるでしょうか?
(岡本)この現象に気づいているのは、世界で私だけかもしれないと思える瞬間があることでしょうか。まだ誰も知らない現象を、最初に解明できる(かもしれない)ところに面白さを感じます。
Q:庄原キャンパスには、理系の学部の割には女性が多い(男女比はほぼ半々)という特徴があります。そういった環境は、研究を進めていくうえで何か影響しましたか?
(岡本)個人的にはあまり影響していません。そういわれて初めてそのことに気づいたくらいです(笑)。あまり気にしたことがないということ自体が、自然体で生活、研究ができていた、ということを示すのかもしれませんね。ただ、キャンパスに男女の数が同数程度であれば、研究、就活など、何をする際にも性別に囚われることがなくなるのではと思います。
Q:日本学術振興会の特別研究員に採用されたことは、岡本さんの将来のキャリアビジョンにどのような影響を与えたでしょうか?
(岡本)研究者としての今後のキャリアについて、より具体的に考えるきっかけとなりました。特別研究員に採用される前は漠然と、将来自分の興味ある研究ができたらいいなと考えていました。しかし特別研究員に採用されたことで、研究期間や助成額に見合った成果を出すことで、初めて次なる研究やキャリアが保証されるということを強く意識するようになりました。
Q:今後どのような場所で、どのような研究を行っていきたいか、簡単に教えてください。
(岡本)研究者は、ポストがなければ研究場所がないという世界なので、場所にこだわりはありません…が、出来れば海外で研究してみたいです。また現在、哺乳動物の卵成熟に着目した研究を行っていますが、今後は卵成熟のみならず、胚発生、着床、個体形成、分娩といった雌の繁殖全般に関する研究をしたいと考えています。
Q:ありがとうございました。今後の活躍を期待しています。
実験後は得られたデータの整理を行います。
追記:岡本さんは2019年4月より、倉敷芸術大学生命科学部の助教に着任されています。今後のご活躍をお祈りします。